日本三人打麻雀協会SDAは、平成29年4月1日に発足し、関西に数多く存在する店舗の協賛の下、
三人打ちの認知度の上昇と、プレイヤー人口の増加を願って、日々活動しています。
今回は、そのSDAの創設を祝って8月1日に催された、「SDA設立記念大会」。
7月中から全3回にわたる予選がすでに執り行っており、残すは準決勝、決勝戦のふたつのみ。
この観戦記では、その決勝戦で行われた3半荘について、記す予定です。
参加者のほとんどは、協賛店舗のメンバーであり、ふだん麻雀を生業とし、麻雀で生計を立てている人々。
そんな彼らは、いったいどのような打牌をし、どのような選択をするのか。
その一部を、この観戦記で表現できれば、という思いを込めて、この先をつづる次第であります。
〇SDA設立記念大会とルール
詳細なルールは、SDA公式ページに記載されていますが、かいつまんで説明すると、
35000点持ち40000点返し40000点に満たないプレイヤーはトップに、10000点分の沈みウマがつく。
完全先付、クイタンナシ
五筒・五索はすべてドラ
抜きドラは華を使用。
フリテンツモOK
オーラス終了時、いずれのプレイヤーの点数も40000点に満たない場合は、西入りをし、誰かが40000点を超えた時点で終了とし、トップとする。
という、現在主流の三人打ち麻雀のフリールールに則ったもので、点棒が0点となった時点で、その半荘は終了する。いわゆるトビルールも存在する。
〇参加者と関係者の方々
実況・解説席には、最終節ということもあり、加藤哲郎氏が招かれ、そのほか大勢のメンバーの方々が、応援に駆けつけていました。
また、放送は雀サクチャンネルの協力の下、配信が行われました。
決勝卓参加者は、以下の通り
篠原 選手……高槻市雀荘「ルーキー」所属。
緊張しますか? という質問に対しては、「ふつうです」と答える強靭なメンタルで決勝卓に臨む。
石村 選手……雀荘「麻雀クラブひまわり」所属。
ふだんはもっと攻撃的な麻雀らしいが、今回は緊張のため少し抑え気味。
筒井 選手……ルーキーにもひまわりにも通う、雀荘の常連。
なんだったら、昨日もひまわりで麻雀を打っていたらしい。
以下、観戦記。
〇1回戦 並び:石村 篠原 筒井
起親は石村。よくも悪くもない配牌。三人打ちにおいて、起親というのはそれだけでアドバンテージがあるので、ぜひとも生かしたいところ。
と思っていた矢先、なんと配牌で筒井が5pを暗刻で持っており、しかも第1ヅモで4枚目を引いてくる。
一方篠原は、華牌も表示ドラも赤牌も一切なく、対子が多めの少し苦しい配牌。
が、一番最初に聴牌を入れたのは、6巡目篠原。
急所のカンチャンを引き入れ、二種類の対子を暗刻にするという、離れ業めいたツモが続き、中ドラ1:カン3p待ち。
打点が安く、手替わりもあるので、ここはヤミテンの選択。
しかし次巡、親の石村が3pをツモ切りし、あっさり放銃。
せっかくの赤五筒が日の目を見ず、筒井としては悔しい展開か。
続いて、大きな動きがあったのは、次局の東二局、親は篠原。
筒井がリーチドラ1:ペン7s待ちの先制リーチ。
それに対して、親の篠原が、5pを暗刻にして、追っかけリーチ:5-8s待ち。
筒井としては、リーチドラ1でしかも愚形で手に蓋をしてしまっていて、思わず渋面を作ってしまうような展開。
この時点で、7sと5-8sの枚数は、1:4の篠原優勢。
しかも、次巡、篠原が5pを暗カン。ますます筒井は顔が青ざめるしかなかっただろう。
そしてその数巡後、筒井が引いてきたのは、5s。おそるおそると差し出されたそれを、篠原はロン。
裏ドラ開帳時、筒井が悲痛そうな面持ちで、「乗るな」「やめろ」と呟いていたが、
しっかり乗って、リーチドラ7――24000点+1000点という大きな和了をものにした。
ところでこの時、解説席から、「鳥羽一郎」という声が聞こえてきた。
関西の三人打ちフリー雀荘に通いなれていない方は、いったいなんのことやら、というものだが、
これはいわゆるスラングのようなもので、フリー雀荘では、裏ドラにご祝儀がつくので、和了時には点棒とともにそのご祝儀の数も申告する。
例えば、「満貫の1枚」、「跳満の2枚」という風に。
そして今回の和了は、「倍満の1枚」だったので、「トッパンの1枚」→「トッパンイチ」→「トパイチ」→「鳥羽一郎」という訳だ。
*トッパンとは、関西において倍満のことを指す。
続く、東二局 一本場。篠原に大きな和了を許してしまった以上、これ以上の連荘はご免こうむりたい、筒井・石村の両名。
かといって、筒井は先ほど24000点の放銃をしてしまっていて、強く攻めづらいか。
配牌は、石村が中を暗刻の2シャンテン。筒井もまた白対子。絶好の親キックの配牌と言えるだろう。
対する親の篠原は、面子と搭子がひとつずつの5シャンテン。
6巡目に筒井が白を自力で重ね、聴牌を入れる。1-4p、8sの3面待ち。これをヤミテン。
理由としては、8sが河に1枚見えで、残り点棒が10000点しかなく、リーチ棒を供託してしまうと、石村への放銃でもハコ割れしてしまうからだろうか。
が、次巡、河に5sが放流されたの受けて、ツモ切りリーチ。
次々次巡、石村にも聴牌が入る。中ドラ3:1-4s待ちをヤミテン。
1-4sはリーチ者である筒井の現物であり、その直前にダブ東を鳴いて、混一色に向かった篠原が掴めば止まらない牌だ。
次巡、1mを引いてきた石村。少考した後、ツモ切りリーチ。
役牌を叩いて攻勢に出た親の篠原を、子の二軒リーチで抑えつつ、最悪、筒井に放銃してもよし、筒井から出和了してもよし、という思惑だろう。
この時点で、64000点トップ目で親の篠原の手牌は、混一色の1シャンテン。
和了すれば、ほぼトップ確定の点棒が手に入るため、石村の思惑とは裏腹に、止まることはないだろう。
ツモってきた東を加カンしてきて、嶺上牌から手にした五筒を雀頭にし、ダブ東混一色ドラ4――24000点は25000点:ペン3p待ち。
実はこの時点で、3pは山に3枚。手に汗握る展開だ。
次巡、篠原ツモ1p。搭子の2pを切ることで、筒井への放銃を回避しつつペン3p待ちから、1p、5pのシャンポン待ちに振り替えて、
そして直後、筒井がツモってきた牌は、なんと5p。
石村への放銃を恐れながら切ったところ、手牌を倒したのは篠原で、その和了形を見て、これには筒井も苦笑いせざるをえなかったようだ。
筒井のハコ割れにより、第一回戦はこれで終了。
- 石村:30000点→▲20pt
- 篠原:92000点→+99pt
- 筒井:-19000点→▲79pt
〇2回戦 並び:篠原 筒井 石村
起親は、先ほど二連続倍満で筒井を沈めた篠原。
解説席では、「(デカトップに胡坐をかいて)笑ったら勝負熱が逃げて、油断が配牌に現れる」
というようなことが言われていたが、それに反して篠原の配牌は好形3シャンテンのドラ対子。
とはいえ、筒井も白が暗刻で南が対子。しかも混一色系統、石村も搭子十分かつ役牌対子でそれほど悪くなく、横並びの配牌といえるだろう。
その中で抜け出したのは、篠原だった。一気通貫ドラ3:ペン7sを先制リーチし、跳満を確定させた。
待ちは悪いものの、やはり親の先制リーチは子ふたりからすれば、圧倒的なプレッシャーとなる。
が、筒井も負けてはいない。同巡、南を重ね、四暗刻1シャンテンで片筋の4pを勝負。
そして10巡目、念願の四暗刻を聴牌:6p、4s待ち。山には2枚生き。5sをたたき切り、威勢よくリーチ。
しかし次巡、山に3枚生きていた7sを篠原が難なくツモり、9000オール。
第一回戦、大きなマイナスでスタートしてしまった筒井としては、なんとしても和了りたかった四暗刻だが、一度のツモもさせてもらえないまま平局となってしまった。
その後、小さな和了で局は進む。
- 篠原:56000点
- 筒井:29000点
- 石村:20000点
この点棒状況で訪れた、南一局。各プレイヤーにとって、この局が今大会ひとつの分かれ目となる。
篠原はここで和了切れば、二連続トップで、決勝卓優勝が目前となり、翻って、ほかのふたりはここを確実に抑えねばならない。
横並びの配牌から始まって、先制リーチを打ったのは篠原。リーチドラ5:カン2s待ち。
それを受けて苦しいふたり。ここで、篠原に和了らせる訳にはいかないが、かといって放銃すれば、次局、トビの危機が見えてくる。
粘る両者。だが、結末は、石村に聴牌が入り、そのリーチ宣言牌を篠原が捕らえて、平局となった。
最後は、篠原の再連荘を挟んで、筒井が着順の変わらないツモ和了。
篠原のトップで、第二回戦は終了した。
- 石村:-5000→▲85pt
- 篠原:87000点→+171pt
- 筒井:23000点(トバし)→▲86pt
〇三回戦 並び:筒井 石村 篠原
篠原が二連続トップを二連続トップを取り、また、石村・筒井はともに一度トバされ、かなり苦しい展開となった第三回戦。
篠原にとっては、多少の打ち込みは度外視して、局の消化に努めたいところ。
一方、ほかのふたりは、最悪着差を争うだけの勝負となり、そうなった場合、篠原の優勝は不動のものとなるだろう。
東一局、筒井の親は、筒井の6000オールツモ和了りで連荘。
ふたりを同時にトバすことができれば、篠原をまくる目も出てくるので、嬉しい和了といえるだろう。
そして東一局一本場。石村が6巡目までに四暗刻の1シャンテンにこぎつける。
素点を稼ぐためにも、なんとしても和了りたい手牌だったが、二枚目の南が出て、泣く泣くポンして、対々和聴牌。
しかし、この局を制したのは篠原。軽い和了で、局を消化する。
東三局、篠原の親番。現在のポイント的に、和了ってよし、他家に和了られてもよし。
そして実際に先制リーチをかけたのは、筒井だった。
56778 の形から、平和が確定する8s切りリーチで高打点を目指すかに思われたが、筒井が選んだのは、7s切り。
リーチドラ5:5-8s待ち。おそらく、5sをツモって来た時に、裏が1枚乗れば倍満まで伸びる、ということを考えてのことだろう。
この時、8sは石村の手の中で暗刻で、筒井の和了は厳しいかと思った直後、筒井は5sを一発ツモ。
この時点で倍満はある上に、裏が2枚乗り、三倍満となった。
これで、いよいよ篠原にとっては楽な展開となった。
というのも、いまの和了で石村の点棒は残り9000点のトビ圏内となってしまった。
あとは、南一局で親番の筒井が跳満でもツモってくれれば、それで優勝となる。
筒井も筒井で、篠原と石村を同時に飛ばさねば、まくり目が生まれない条件下、その両者の点棒が大きく離れてしまった以上、二着を確保しにいかざるをえない。
その思惑通り、次局で筒井が倍満をツモ和了り、第三回戦も終了した。
〇結果発表
- 石村:▲160pt
- 篠原:+147pt
- 筒井:13pt
で、篠原の優勝となった。
結果だけ見てみれば、篠原が終始先制リーチを打つなど、押している印象だったが、
その内実には、石村・筒井の両名の、巧妙な駆け引きが常に行われていた。
筒井のかわし技術、石村の防御技術は、すべての麻雀プレイヤーが見習うべきだろう。
ちなみに、今大会のそれぞれのプレイスタイルから、
篠原は「ジャイアン」、石村は「アサシン」の愛称が生まれたのは余談である。
今大会は、SDA創設記念大会と銘打たれているが、今後も継続して、同様三人打ちの大会が開催されるだろう。
プロ・アマ・雀荘メンバーなど、立場や所属は不問の上で参加できるため、ぜひとも腕に覚えのある方々は、次回以降奮って参加してほしい。
また、動画はyoutubeでも公開しているので、興味のある方は、以下のURLから。
https://www.youtube.com/watch?v=4FUflbZod3w
〇筆者の注目ポイント
筆者が注目したいのは、2回戦、東二局0本場、筒井の親番時の、石村の打牌だ。
石村は面子手にも取れる牌姿を、七対子に完全固定する。
その後、親の筒井が手出しを一回挟み、現在トップ目の篠原が押し気味なのを受けて、
七対子1シャンテンから、ツモってきた無筋を勝負せずに場に二枚切れの9mを払い、自分は勝負の舞台から降りた。
この時、石村の点棒は24000点で、親の筒井に放銃すると、次局以降厳しい状況に追い込まれる。
牌姿も、手牌にドラが少なく、最終形はせいぜい満貫止まりで、実に見事な判断だと思う。
その後も、河に切れた牌、もしくは両現のみを切り続け、見事にこの局をのりきった。
この石村の丁寧な麻雀は、解説陣からも絶賛の声が上がり、ぜひとも参考にしていただきたい。
筒井、ここから打9p選択
本大会のスコア表
予選①
1回戦 | 参加者 | 筒井 | たかし | 竹下 |
素点 | +8 | +32 | ▲40 | |
ウマ/トビ | 0 | +20 | ▲20 | |
ご祝儀 | 0 | +2枚 | ▲2枚 | |
小計 | +8 | +58 | ▲66 | |
2回戦 | 素点 | +75 | ▲44 | ▲31 |
ウマ/トビ | +30 | ▲20 | ▲10 | |
ご祝儀 | 0 | +3枚 | ▲3枚 | |
小計 | +105 | ▲73 | ▲32 | |
合計 | +113 | ▲15 | ▲98 | |
3回戦 | 素点 | ▲42 | ▲22 | +66 |
ウマ/トビ | ▲20 | ▲10 | +30 | |
ご祝儀 | ▲1枚 | 0 | +1枚 | |
小計 | ▲65 | ▲32 | +97 | |
合計 | +48 | ▲47 | ▲1 | |
予選②
1回戦 | 参加者 | 篠原 | 伊藤 | 嶋田 |
素点 | +56 | ▲16 | ▲40 | |
ウマ/トビ | +30 | ▲10 | ▲20 | |
ご祝儀 | +5枚 | ▲1枚 | ▲4枚 | |
小計 | +101 | ▲29 | ▲72 | |
2回戦 | 素点 | ▲12 | ▲16 | +28 |
ウマ/トビ | ▲10 | ▲10 | +20 | |
ご祝儀 | ▲3枚 | ▲6枚 | +9枚 | |
小計 | ▲31 | ▲44 | +75 | |
合計 | +70 | ▲73 | +3 | |
3回戦 | 素点 | +61 | ▲16 | ▲45 |
ウマ/トビ | +30 | ▲10 | ▲20 | |
ご祝儀 | +6枚 | ▲2枚 | ▲4枚 | |
小計 | +109 | ▲32 | ▲77 | |
合計 | +179 | ▲105 | ▲74 | |
予選③
1回戦 | 参加者 | 天野 | 石村 | 山田 |
素点 | ▲8 | +59 | ▲51 | |
ウマ/トビ | ▲10 | +30 | ▲20 | |
ご祝儀 | +1枚 | 0 | ▲1枚 | |
小計 | ▲15 | +89 | ▲74 | |
2回戦 | 素点 | ▲42 | +38 | +4 |
ウマ/トビ | ▲20 | +10 | +10 | |
ご祝儀 | ▲3枚 | ▲2枚 | +5枚 | |
小計 | ▲71 | +42 | +29 | |
合計 | ▲86 | +131 | ▲45 | |
3回戦 | 素点 | +50 | ▲8 | ▲42 |
ウマ/トビ | +30 | ▲10 | ▲20 | |
ご祝儀 | +4枚 | ▲3枚 | ▲1枚 | |
小計 | +92 | ▲27 | ▲65 | |
合計 | +6 | +104 | ▲110 | |
この記事へのコメントはありません。